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現代
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そんなこんなで、俺たちの関係は小学校を卒業しても続いた。

珍しいことに、親の勤務が落ち着いたようで中学三年間を同じ公立の学校に通うことになった。勿論そこには、自称宇宙人の姿もあった。

田舎の中学といっても、新入生全員が同じ小学校卒業で顔見知りだ、という訳ではない。俺の通った中学校は、全部で三つの地域の小学校から生徒が集まってきていた。ざっと三分の二は知らない顔だった。それ故、当然新しい交流が築かれるはずだった。



そう、はずだったと言うからには、現実はその通りではなかった訳だ。

入学した当時は、新しい出会いにこれから始まるであろう青春時代を謳歌する気満々だった。なぜなら、ここでは俺は『転校生』という肩書きがなく、普通の『一般生徒』として学生生活をスタートできるからだ。特別な付加情報に飾られた自分ではなく、本当のまっ皿な自分を判断してもらえる。転校生の肩書きに疲れきっていた俺には、真の自分を見てもらう絶好の機会だったのだ。

しかし、そんな俺の思いも入学して一月もすると叶わぬ夢と無惨に崩壊する。

原因の一途を担うのは、そう自称宇宙人の存在だった。

中学入学したからといって、新しい友だちと遊ぶのが夢中で自称宇宙人のことをすっかり忘れていたーーーなんて薄情な奴ではない俺は、クラスが違っても何があるでもなく不定期に自称宇宙人の下を訪れていた。

自称宇宙人は中学生になっても、相変わらず教室に一人で席に座っていた。自称宇宙人の周りだけいつ行っても人がなく、まるでそこだけ異世界のようだった。

一人孤立(自称宇宙人が聞いたら怒りそうだが)している自称宇宙人を見ていると、何だか自分一人だけ今の生活を楽しんでいる訳にはいかないなと何だか使命感のようなものを持ってしまった俺は、別のクラスだというのに、色々とお節介を焼くようになってしまった。

不定期だった訪問が定期的に変わる頃、学年中にあいつも変な奴だなんていう噂が流れた。
中学生になっても今までのスタンスを崩さず、人との交流を絶っていた自称宇宙人は入学早々『学年一の変人』という称号を獲得していた。お陰でそんな自称宇宙人と普通?に会話している俺まで、変人という不名誉な称号を与えられてしまったのだ。

それまで親しくしていたクラスメートからは敬遠され、他のクラスの人にまでも奇異な目で見られるようになってしまった。
そこまで普通するかと思うものの、思春期という不安定な時期にいる中学生だ。自分と違ったものを排除しようとする傾向は、自称宇宙人を見ていても、大きいのは仕方がない。




こうして俺の青春を謳歌する夢は自称宇宙人のせいで、脆くも崩れ去ったのだ。




ーーーなんて、自称宇宙人のせいにするのは姑息過ぎる。

自称宇宙人は別に、俺に構ってほしいなんて頼っていなかったし、俺だって噂が流れる前に、変な空気が漂い始めた頃に訪問を辞めれば良かったのだ。そうすれは、俺はあんな不名誉な称号を得ることもなかっただろう。

それを知っていてしなかったのは一重に、自称宇宙人との交流を俺が気に入っていたからだった。

最近のテレビでーーーとか、流行りのアーティストがーーーとかそんな話をする奴らは、他を探せばいくらでもいる。でも、母星に帰りたいーーーとか、地球の空気は悪いーーーなどといった話は、自称宇宙人とだけしかすることができない。

この時の俺にとって、自称宇宙人は他の誰にも代えられない唯一無二の存在だったのだ。

だから俺は他のどの級友よりも、自称宇宙人を選んだのだ。





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